現在、東京国立博物館の常設展示に自在置物が多数出ています。
金工
本館 13室 2020年9月15日(火) ~ 2020年12月13日(日)
https://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=6178
今回は明珍宗察の龍の自在置物とともに、同作の甲冑金具も展示されています。この甲冑金具は以前に東京国立博物館のブログで紹介されたもので、博物館内でその存在が明らかになったのは最近のことのようです。https://www.tnm.jp/modules/rblog/index.php/1/2015/07/03/%E8%87%AA%E5%9C%A8%E7%BD%AE%E7%89%A9/
薄い鉄の板に「獅噛み」や雲龍の図が精巧に打ち出されており、甲冑師明珍宗察の名工ぶりが窺われます。この甲冑金具は1910年開催の日英博覧会にも出品されたとみられます。農商務省『日英博覧会報告 上巻』には今村長賀出品「丸龍打出金象篏入胸板及籠手残缺三箇」とともに東京帝室博物館から「籠手残缺」が出品されており、「前者ノ籠手ト同品ニシテ前者は左後者ハ右ナリ」となっています(https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/801796/242)。
『稿本日本帝国美術略史』には今村長賀が日英博覧会に出品した「丸龍打出金象篏入胸板及籠手残缺三箇」とみられる写真が掲載されています。
(https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1765342/492 解説 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1765342/495)
東京帝室博物館から「籠手残缺」として日英博覧会に出品され、現在東京国立博物館で展示されている甲冑金具も、もとは同じ甲冑に使用されていたものということでしょう。
なお、今村長賀蔵であった方の籠手金具とみられるものが今年7月にヤフオクに出品されていました。今回東博で展示されている籠手金具や『稿本日本帝国美術略史』掲載のものと画像を比べて見る限り、その可能性が高いと思われるものでした。
https://megalodon.jp/2020-0930-1904-00/https://page.auctions.yahoo.co.jp:443/jp/auction/o405570185
ともあれ、自在置物は甲冑師の技術を基にしているということは知識としては語られますが、こうして名工の手による自在置物と甲冑部品を同時に目にすることで、それを実感できる機会は貴重なのではないでしょうか。
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