以前に「高瀬好山傳」についての記事で好山のパリ万国装飾美術工芸博覧会への出品にも少し触れましたが、1929年開催の巴里日本美術展覧会、1930年のリエージュ産業科学万国博覧会への出品も確認できました。「明治期自在置物の博覧会等出品年表」と重なる部分もありますが、この項では自在置物に限定せず、それらの高瀬好山の博覧会や美術展覧会への出品についてまとめ、新たに確認できたものは随時追加していきます。
(Last updated: 21 Jan. 2019)
大正4年(1915)
*大典記念京都博覧会
・高瀬虎吉
「鐵製海老置物」
銅賞
京都市編『大典記念京都博覧会報告』(京都市 大正5年)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/944446/307
Christie’s オークションに出品されたこの作品と思われるものの箱書から
高瀬好山工房の宗明が製作したとみられる。
大正14年(1925)
*パリ万国装飾美術工芸博覧会
この博覧会では出品者の一部に政府からの制作費補助がなされており、高瀬好山も京都府における補助金支給者とされている。この補助は「打出シ化粧具入匣、金属」についてのもので、この作品は同博覧会において銅賞を受賞。別途京都府からの普通出品物として好山は「銅器 置物」を出品している(京都貿易協会『明治以降京都貿易史』 1963年 による)。
“Catalogue illustré de la section japonaise à l'exposition internationale des arts décoratifs et industriels modernes. Paris. 1925”
https://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k1163948x
また、上記カタログにおける出品作品の表記は以下のとおり。
No 114. - Cl. 10. - Coffret en fer sculpté (8.260 Fr.); Takase Kozan
No 345. - Cl. 10. - Objet d’art en argent, cuivre et fer, et support en bois paulownia (les 3 pièces : 7.470 Fr.); Takase Kozan
昭和3年(1928)
展覧会への出品作ではないが、昭和3年の昭和天皇の即位大礼に際し、ともに高瀬好山も制作に参加。
「瑞鳳棚」(皇室献上作品)
山鹿清華図案、蒔絵を基調として「陶磁、銅板、七宝、染色、刺繍の粋を配し」「京都美術工芸の縮図たらしめ」るべく合作されたとのこと。制作に尽力したとして挨拶状が贈られた人物には、好山のほかに川島甚兵衛、清水六兵衛、伊東陶山、西村彦兵衛、稲葉七穂、「花車」の制作にも参加した古市卯之助、神坂祐吉らの名前も見られる。
京都府編『昭和大礼京都府記録 上巻』(京都府 昭和4年)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1190228/156
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1190228/157
「飾花車」
昭和3年に完成し「奨美会の所蔵となったが、後年日本政府からドイツ・ヒットラー総統に贈呈された」という。
榊原吉郎編『近代の琳派 神坂雪佳』(京都書院 昭和56年)
冨木宗行氏によれば、京都国立近代美術館所蔵の「花車」(図案:神坂雪佳、制作:高瀬好山/古市卯之助/神坂祐吉/岩村哲斎/初代山田楽全/山鹿清華)は、より大きな作品の試作、あるいは縮小版として作られたとのこと。この「より大きな作品」が「飾花車」と思われる。
http://search.artmuseums.go.jp/records.php?sakuhin=189472
大礼に際し京都市の物産が天覧に供され、高瀬好山の置物「長楽無極」が御買上となっている。
京都市編『京都市大礼奉祝誌』(京都市 昭和5年)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1905139/432
昭和4年(1929)
*京都美術工芸品展覧会
・高瀬好山
「銀伊勢海老置物」「鐵製鯉置物」
『京都美術工芸品展覧会図録』(京都美術工芸品展覧会編 昭和5年)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1187673/30
*巴里日本美術展覧会
・高瀬好山
「石蕗形果實盆」(仏語表記 Vide poche en fer battu)
仏語表記から鉄打出しの作品であるとわかる。この展覧会には黒瀬宗世「鉄打出花瓶」、米沢弘安「鉄打出 睡蓮額面」も出品されている。
日仏芸術社編『巴里日本美術展覧会図録 下巻』(日仏芸術社 昭和4年)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1192035
また、高瀬好山の実弟で日本画家の高瀬五畝も「野雉」を出品している。
日仏芸術社編『巴里日本美術展覧会図録 下巻』(日仏芸術社 昭和4年)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1192026
昭和5年(1930)
*リエージュ産業科学万国博覧会
日本産業協会編『リエージ産業科学万国博覧会日本産業協会事務報告
白耳義国独立百年記念』(日本産業協会 昭和6年)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1178353
帝国工芸会の出品者の一人に高瀬好山の名がある。出品作品の詳細については不明。
昭和8年(1933)
*第四回京都工芸美術展覧会(京都工芸美術協会主催 日本橋三越)
『第四回京都工芸美術展覧会出品目録』
https://opac.tobunken.go.jp/detail?bbid=9000582916
(PDF) http://www.tobunken.go.jp/archives/PDF/library-books/9000582916.pdf
・高瀬好山
「洋草置物」
昭和9年(1934)
*大礼記念京都美術館美術展覧会
「幽谷之友置物」と題された蘭の置物を高瀬好山の名で出品。
芸艸堂編『大礼記念京都美術館美術展覧会図録』(芸艸堂 昭和9年)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1688543(インターネット非公開)
*中沢岩太博士喜寿祝賀記念展覧会(京都、東京)
・高瀬好山
京都市公会堂東館 六月一日、二日、三日
「鐵河海老置物」「四分一蛇置物」「渡銀蟹文鎮」
東京商工奨励館 六月十一日、十二日、十三日
「鐵河海老置物」「四分一蛇置物」
『中沢岩太博士喜寿祝賀記念帖』(中沢岩太博士喜寿祝賀記念会 昭和10年)
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