知らなかったのですが、メトロポリタン美術館に鈴木長吉の「鉄製」の鷲の作品があったのですね。頭と爪は鋳造ですが、その他の部分は明珍の作品のように別々に制作した鍛造部品を鋲留めしてあるそうです。無銘ではあるものの、1893年のシカゴ万国博覧会に出品予定であったとのこと(画像は The Metropolitan Museum of Art のオンラインコレクションより)
http://www.metmuseum.org/art/collection/search/22137
少し前のブログ記事でも触れましたが、同年10月21日の"Japan Weekly Mail"の記事に鈴木長吉の工房に鉄製の鷲が置かれているとの記述があります(以下は同記事からの抜粋)。
"Another powerful occupant the same ateliar is an iron eagle, life sized with outstretched wings and wonderfully chiselled plumage. SAITO's flexible necked eagle, now in the World's Fair at Chicago seems to have suggested this work, but the SUZUKI eagle now on view in Irigune cho is happily free from the pigeon-like affinities of the Exposition bird. It is a veritable eagle, fierce, meagre ,alert, and pitiless, just such and bird as SHELLEY conceived "sailing incessantly with clang of wings and scream" in lonely lands."
鈴木長吉の工房を訪れて書かれたこの記事では、シカゴ万国博覧会に出品された"SAITO's flexible necked eagle"、すなわち斎藤政吉出品の板尾新次郎作の鷲自在置物にも言及した上で、鈴木長吉の工房の鷲をそれよりも優れたものとして絶賛しています。"outstretched wings" とあるように翼を広げた姿であるとの記述もあり、メトロポリタン美術館の鷲と同一作品である可能性も考えられるでしょう。
シカゴ万国博覧会に出品されなかったのは、やはり板尾新次郎が出品した鉄製鷲自在置物との競合を避けたからかもしれません。いずれにせよ、この鷲は鈴木長吉に明珍の鉄製の作品が影響を与えたことを示す貴重な現存作品といえるのではないでしょうか。
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