明治21年、前年に龍池会から改称した日本美術協会による初めての展覧会において自在置物が数点同時に出品されたことは以前から触れてきました(こちらの記事など)。今回はそのときの出品物を撮影したとものとみられる、東京国立博物館研究情報アーカイブズで閲覧可能な『美術会列品写真帖』について。
同写真帖より「[歌仙図];三幅之内・青磁香炉・伸縮鳳凰」
http://webarchives.tnm.jp/infolib/meta_pub/G0000002070607HP_4108
これらは松平直徳により出品されたもので、「伸縮鳳凰」は明珍作。大きさはそれほど大きいものではないようですが、写真を見る限りでは少なくとも翼の部分は可動になっているとみてよいでしょう。大名家の所蔵であったことが確実な鳥の自在置物は、現在のところこの作品だけではないでしょうか。
鳳凰の部分の拡大。
同「鉄製伸縮龍・青磁花瓶」
http://webarchives.tnm.jp/infolib/meta_pub/G0000002070607HP_4089
こちらは松平茂昭の出品。この龍自在置物は二代明珍吉久作とされる越前松平家伝来のものです。越前松平家には大小2つの龍自在置物が伝わっており、この展覧会に出品されたものがどちらかは出品目録だけでは知ることができなかったのですが、この写真により大きい方の龍であったことがわかります。
同じく松平茂昭出品の「魚鱗具足」の写真も掲載されています。
http://webarchives.tnm.jp/infolib/meta_pub/G0000002070607HP_4088
この具足も明珍吉久作と伝えるもので、細かい部品を自在置物のように鋲留めすることで伸縮自在の構造になっています。
これらが出品された日本美術協会展覧会における佐野常民の演説についての記事でも触れていますが、明珍の甲冑製作技術を用いた自在置物はこの展覧会において非常に注目されていたとみられます。出品された旧大名家所蔵のこれらの作品の写真記録はいずれも貴重なものといえるでしょう。
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