今春には三井記念美術館で清水三年坂美術館所蔵の明治工芸の展示もあるということで、そのへんの話題をとりとめもなく書き連ねてみることに。
わりと最近に海外のお宝鑑定番組 Antiques Roadshowに海野勝珉の銀の蓑亀の作品が出ていた模様です。
http://ec2-23-23-94-117.compute-1.amazonaws.com/wgbh/roadshow/archive/201202A05.html
鑑定依頼人の父が第二次大戦後に持ち帰ったものでカードゲームに勝って手に入れたそうです。鑑定額は$20,000 - $30,000 とのことですが、よく聞いてるとこの鑑定している時点では誰の銘なのかわかっていないようなので結構イイカゲンです(笑)。有名オークションに出品されたらもっと高額になるのではないでしょうか。
この正月に海野勝珉の蘭陵王置物を取り上げたTV番組をやっていて廃刀令で苦労したことなどにも触れていましたが、近代デジタルライブラリーで読むことができる「近世名匠列伝」という本の海野勝珉の項にそのあたりの話も出ています。
近代デジタルライブラリー「近世名匠列伝」 海野勝珉
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/972091/176
海野勝珉の父はかなりの奇人だったそうで、虫好きでたくさん飼っていたので同じく虫好き(!)の水戸の烈公がカンタンをとってくるよう命じたときにちょうど飼っていたカンタンを献上して朱塗りの虫籠を拝領したとのこと。
勝珉は三味線や踊りを小さい頃からこの父に仕込まれていて、廃刀令で食い詰めたときに常磐津に転向することも考えたとか。
この「近世名匠列伝」昔の本ですが読みやすい文体なのでお薦めです。柴田是真の項もあり著名なわりに伝記という形で読む機会はあまりないと思うので、楽しめるのではないかと思います。東博にも所蔵品がある彫刻の竹内久一や島村俊明なども今まで馴染みがなかったのですが、読んでみるとともに江戸っ子ぶりが感じられて親近感が湧いてきます。竹内久一は父の知り合いの根付師のもとで彫刻を学び始めたそうですが、歌川国芳の門人だったというその父はかなりの通人だったようで、年頃になった久一を連れて吉原に行った話などはなかなか強烈です。
Antiques Roadshowには以前にもいくつか幕末明治の金工作品が出ています。
まずは明珍作と思われる鉄の伊勢海老の自在置物。
http://www.pbs.org/wgbh/roadshow/archive/200302A19.html
ちょうど今東博にも鉄の伊勢海老が出ていますが、やはり動画で見るとまさに自在に動く様子がよくわかります。この伊勢海老は出来も非常に良いですね。
こちらが東博の明珍宗清作の伊勢海老。
そういえば海野勝珉も明珍吉久の手による鉄の鷲の置物を見て「『若し自分をして製作させたならば、数人の助手と三ヶ年の歳月に、およそ十万円以上の費を要するであろう』と言い、その入神の妙技には唖然として驚歎時を久しうした」という話が伝わっているそうです。
自在置物といえば、昨年末にオークションに出た高瀬好山工房の宗義の蛇は2000万円近い落札価格になっていて驚きました。いい動きしてます。出来もかなり良い作品だったようです。宗義の蛇も東博の所蔵品にありますね。
そしてこちらはその高瀬好山のものとみられる銀の昆虫の自在置物。
http://www.pbs.org/wgbh/roadshow/archive/200204A22.html
動画が見られなくなっているようなのが残念。
高瀬好山の銀製の昆虫十二種セットも最近Bonhamsに出品されてましたが、これももともとは十二種揃っていたのかもしれませんね。
最後は正阿弥勝義の花瓶。
http://www.pbs.org/wgbh/roadshow/archive/200802A16.html
リアルに表現されたタガメなどの水生昆虫が見られます。
フリーマーケットでわずか2,000ドルで入手したそうです。
鑑定額は20,000~30,000ドルになってますが、現在ならもっと高値になっているのではないでしょうか。
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