ちょっと前のお話になりますが、グループ展の会期中ではありましたが清水三年坂美術館主催の特別鑑賞会に参加してきました。
会場は祇園にある元お茶屋のお店、食事付きです(こんな機会でもなかったら一生縁がなかった?)。実際に作品に触れることのできるこの特別鑑賞会、今回は「自在置物」!これこそ手に取ってみてこそ本当の面白さが判るものなので楽しみにしていました。
今回個人的に見応えがあったのは、高瀬好山の鉄製の蟹、好山工房の宗好作の鉄製昆虫各種、宗好の父宗信の龍、そして「美の巨人たち」で紹介された銀製の鯉といったところでしょうか。
好山の蟹は実物の沢蟹くらいのサイズで、とても繊細に作られていました。鉄でここまで細かい細工をするのはやはり相当な技術なのだろうと思います。ちなみに前日の回の鑑賞会で爪のところにあった「好山」の銘が発見されたのだそうです。
宗好作の昆虫はカブトムシ、クワガタ、セミ、スズメバチ。鉄製ですが薄く軽くシャープな仕上がり。解説の清水三年坂美術館館長によると「銀製のものは以前細い部分を折ってしまったことがあるので、鉄製のものにしました」とのお話でした。確かにそうそう折れたりするような感じはしませんでしたが、破損した場合むしろこちらの方が直せないのでは?と思いました…。そんな作品を惜しげも無く(?)多くの人に触らせてしまうとはやはり太っ腹です!
「皆さんも買うのでしたら鉄製のものが壊れないのでおすすめですよ♪」とも仰っていましたが…。その、それはなかなか機会ないと思うのですが…
宗信作の龍は長さ30〜40cmくらいだったでしょうか。冨木一門の手による龍の実物も見るのは初めて。小振りでちょっと手元に置いておきたくなるような感じです。頭が小さめで全体のバランスも良いです。
さて、やはり今回の呼び物は高瀬好山の銀製の鯉でしょう。こちらも今まで見たことがあったのは明珍の鉄製のものだけでした。
実際に触れて動かすと本当に滑らかな動き、横たえられた姿でさえもまさに「マナ板の上の鯉」という言葉を思い出してしまうくらいリアル。各々の鰭、ヒゲ、口の開閉なども確認しました。本当は口を開けて内部の構造を見てみたかったのですが、そこまで大きく開かなかったので残念ながら良く判りませんでした。口は普段は閉じた状態になるようにバネが効かせてあるようです。
実は、この鯉に関してはずっと確かめてみたかったことがあったのです。それは…
この鼻の穴についている蓋です…!
これも実物のように閉じることができるのではないか?とずっと気になっていました。結論をいいますと閉じはしなかったのですが、やはりピコピコと動かすことができました。このフタの可動は明珍の鯉では再現されているのを見たことがないのです。このあたりに冨木一門のより一層リアルな表現への追求がみられて大変興味深いです。今回それを確認することができたのが最大の収穫でした(ってそんな大げさな話でもないですが…)。
鑑賞会の後で行った清水三年坂美術館には四分一製の鯉が代わりに出ており、二種類の鯉が見られたのも良かったです。
鑑賞会終了後のお食事。今回出ていた明珍の手長海老にちなんで、手長海老の揚げたものが付いていました(笑)
清水三年坂美術館の企画展スケジュールによれば 2012年 11/ 23(金)~ 2013年 2/17(日)「鍛鉄の美 - 鐔(つば)、鐙(あぶみ)、自在置物」だそうで、おそらく明珍の自在置物が出展されるのではないかと思います。
http://www.sannenzaka-museum.co.jp/kikaku.html
そうすると高瀬好山、冨木一門の系列の自在置物はいずれまた別に特集して展示されることになりそうなので、期待してしまいますね。
コメントをお書きください